賃貸経営では賃貸借契約書は入居者とオーナーとの関係にとって非常に大切な書面です。今回の主な3つの変更項目は、「敷金についての定め」、「原状回復についての定め」、「個人保証の極度額についての定め」です。
1つ目の敷金についての定めについては、以前の民法にはなかった「民法第622条の2 敷金」が追加されました。
敷金とは、入居する前の賃貸借契約の時点で、借り主が貸し主に預ける保証金です。
現状では、敷金についてのトラブルが起きていましたが、民法に明文規定がなく、裁判の判例を積み重ねて解釈することによって、紛争を解決してきました。このような解釈には、さまざまなものがあるため一般の人に分かりづらいものでした。そこで、今回は新たに民法にて明記されることになりました。
明記された内容として、敷金が次のように定義されています。「賃料債務等を担保する目的で賃借人が賃貸人に交付する金銭で、名目を問わない」です。今でも、地域によって敷金に相当する呼び方が異なっています。例えば、「礼金」「権利金」「保証金」などです。これらの呼び方を民法では名目と言い、この名目で一定の金額を借り主が貸し主に支払われており、その目的も地域ごとに異なるものでした。そこで、今回は名目にかかわらず、担保目的であれば敷金に相当すると改正されました。今までは、ある名目は敷金ではないので違う解釈ができるなどとの言い訳が行われていましたが、今後はどのような呼び名や名目でも、敷金となります。
2つ目の原状回復についての定めにつきましても、敷金と同様に、今まで、原状回復についてのトラブルが起きていましたが、民法に規定がなく、判例にて解決してきました。
そのため、今回新たに「民法第621条 賃借人の原状回復義務」にて明記されました。
条文内容は、「部屋等の賃借物に損傷が生じた場合、部屋の返還をするときに賃借人は原状回復の義務を負う。しかし、通常の使用状況で発生した損傷や経年変化では、原状回復の義務を負わない」と明記されました。これにより、原状回復の定義が明確になり、原状回復について借り主が不利になっていた部分や、また逆に貸し主が不利になっていた部分などについて、ある一定の境界線が明文化されています。
しかしながら、今回の改正でもまだ不明確な部分も残っています。
明確な部分と不明確な部分を含めて、不動産オーナーが事前に認識しておくことが大切です。